大学2年の春、僕は授業で『日本の自然と文化を考える』という授業を受けることになりました。
『受けたくて』ではなく、『受けなければならなかったから』です。
その授業を担当していたのは、中村浩志という先生でした。
中村先生は鳥の研究では世界的にも有名な学者で、自然にも精通していて、『子供の頃の原体験が人間を作る』という持論を持つ人でした。
授業を受け始めた当時の僕は、子供の頃のような自然への興味が、心の奥底へとしまわれていて、『そんな、鳥とか花とかの名前なんて覚えたってちっとも面白くない』と感じていました。
そんな僕が、この授業をきっかけに、少しづつ変わって行くのです。
この授業では、中村先生と野外へ出かける機会がたくさんありました。
植物の観察、フクロウのヒナの観察、バードウォッチング、さらには夏休み中の河原でのキャンプ。
その中で中村先生は木に登ったり、イワナを取ったり、実に様々な『技』を見せてくれました。
そんな先生の姿を見るうち、僕の少年時代の思い出や、元来から人より少々強めの好奇心が刺激され、気がつけば僕は一人でも自然の中に遊びにに行くようになっていました。
植物や鳥の名前を覚えたり、ツリーハウスを作ったり、川に飛び込んだり。
そんな、『自然に帰った』僕に、再び大きな変化が訪れます。
それは、僕が大学3年になろうとしていた、冬のことでした。
続く…